高校数学Ⅰで学習する
「絶対値の方程式・不等式の解き方」
についてイチから解説していきます。
絶対値とは、原点からの距離のことでしたね。
このことを頭に入れておくことが大事です。
今回取り上げる問題は以下の通り。
次の方程式・不等式を解きなさい。
【場合分けがいらない】
(1)\(|2x+4|=6\)
(2)\(|x-2|<4\)
(3)\(|2x+5|≧2\)
【場合分けが必要】
(1)\(|x-3|=2x\)
(2)\(|x-2|≧2x-5\)
(3)\(|x+1|>5x\)
(4)\(|x|+|x-3|≦5\)
それぞれの解き方をイチから確認していこう!
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絶対値の方程式・不等式(場合分けなし)
絶対値のポイント!
次のような形(右辺が正の数)になるときには、場合分けをすることなく解くことができます。
$$cは正の数$$
$$|x|=c ⇔ x=\pm c$$
$$|x|<c ⇔ -c<x<c$$
$$|x|>c ⇔ x<-c, c<x$$
絶対値とは、原点からの距離のことでしたね。
次の方程式を解け。
$$|x|=3$$
こちらの問題を式ではなく、文章で考えてみましょう。
$$|x|=3$$
↓
\(x\)の絶対値は\(3\)
↓
\(x\)は原点からの距離が\(3\)である。
よって、\(\color{red}{x=\pm3}\) になる。
このように考えることができます。
つまり、絶対値の方程式では絶対値をとって右辺の数に±をつければOKということですね。
次の不等式を解け。
$$|x|<3$$
この不等式も先ほどと同じように文章で考えてみましょう。
$$|x|<3$$
↓
\(x\)の絶対値は\(3\)より小さい。
↓
\(x\)は原点からの距離が\(3\)より小さい。
よって、\(\color{red}{-3<x<3}\) になる。
このように考えることができます。
絶対値が小さいということだから、原点寄りの場所、つまり内側の範囲ということになります。
つまり、絶対値の不等式(小さい)では絶対値の中身は右辺の数の±にはさまれる形になるということですね。
次の不等式を解け。
$$|x|>3$$
この不等式も先ほどと同じように文章で考えてみましょう。
$$|x|>3$$
↓
\(x\)の絶対値は\(3\)より大きい。
↓
\(x\)は原点からの距離が\(3\)より大きい。
よって、\(\color{red}{x<-3,3<x}\) になる。
このように考えることができます。
絶対値が大きいということだから、原点から離れたの場所、つまり外側の範囲ということになります。
つまり、絶対値の不等式(大きい)では絶対値の中身は右辺の数の±の外側の形になるということですね。
例題の解説
次の方程式を解け。
$$|2x+4|=6$$
絶対値の方程式を、絶対値をなくして±をつける!
$$\begin{eqnarray}|2x+4|&=&6\\[5pt]2x+4&=&\pm 6\\[5pt]2x+4=6& / &2x+4=-6\\[5pt]2x=2 &/& 2x=-10\\[5pt]x&=&-5,1\cdots(解)\end{eqnarray}$$
次の不等式を解け。
$$|x-2|<4$$
絶対値が数より小さいときには、右辺の数の±にはさまれる形!
$$\begin{eqnarray}|x-2|&<&4\\[5pt]-4<x-2&<&4\\[5pt]-4+2<x&<&4+2\\[5pt]-2<x&<&6\cdots(解) \end{eqnarray}$$
次の不等式を解け。
$$|2x+5|≧2$$
絶対値が数より大きいときには、右辺の数の±より外側!
$$\begin{eqnarray}|2x+5|&≧&2\\[5pt]2x+5≦-2,2&≦&2x+5\\[5pt]2x≦-7,-3&≦&2x\\[5pt]x≦-\frac{7}{2},-\frac{3}{2}&≦&x\cdots(解) \end{eqnarray}$$
絶対値の方程式・不等式の解き方(場合分けあり)
絶対値の外に\(x\)があるときには場合分けが必要です。
場合分けのやり方は以下の通りです。
絶対値の場合分け(はずし方)
\(|x-3|\)の場合分けを考えてみよう。
絶対値の中身が0以上になるとき
\(x-3≧0\)、つまり\(x≧3\)のとき
$$|x-3|=x-3$$
絶対値の中身が0以上のときは、絶対値をそのままはずす。
絶対値の中身が負になるとき
\(x-3<0\)、つまり\(x<3\)のとき
$$|x-3|=-(x-3)=-x+3$$
絶対値の中身が負のときは、マイナスをつけて絶対値をはずす。
例題の解説(方程式)
次の方程式を解け。
$$|x-3|=2x$$
絶対値の外に\(x\)があるので場合分けが必要!
まずは絶対値の中身が0以上になる場合を考える。
このときは絶対値をそのままはずして解いていくことができます。
\(x-3≧0\) つまり、\(x≧3\)のとき
$$\begin{eqnarray}x-3&=&2x\\[5pt]-x&=&3\\[5pt]x&=&-3\end{eqnarray}$$
ここで求まった\(x=-3\)が場合分けの範囲\(x≧3\)の中に含まれているか確認します。
入ってないですね…ということで残念ながら\(x=-3\)は不適となります。
次は絶対値の中身が負になる場合を考えてみましょう。
このときは絶対値にマイナスをつけてはずします。
\(x-3<0\) つまり、\(x<3\)のとき
$$\begin{eqnarray}-(x-3)&=&2x\\[5pt]-x+3&=&2x\\[5pt]-3x&=&-3\\[5pt]x&=&1\end{eqnarray}$$
ここで求まった\(x=1\)が場合分けの範囲\(x<3\)の中に含まれているか確認します。
OK、入ってる!というわけで\(x=1\)が解となります。
$$x=1\cdots(解)$$
例題の解説(不等式)
次の不等式を解け。
$$|x-2|≧2x-5$$
こちらも絶対値の外に\(x\)があるので場合分けが必要です。
まずは絶対値の中身が0以上になる場合。
\(x-2≧0\)つまり、\(x≧2\)のとき
$$\begin{eqnarray}x-2&≧&2x-5\\[5pt]-x&≧&-3\\[5pt]x&≦&3 \end{eqnarray}$$
ここで求まった範囲と\(x≧2\)の共通範囲をとりましょう。
すると、\(2≦x≦3\)という範囲が求まります。
次は絶対値の中身が負になる場合を考えます。
このときはマイナスをつけて絶対値をはずします。
\(x-2<0\)つまり、\(x<2\)のとき
$$\begin{eqnarray}-x+2&≧&2x-5\\[5pt]-3x&≧&-7\\[5pt]x&≦&\frac{7}{3} \end{eqnarray}$$
ここで求まった範囲と\(x<2\)の共通範囲をとりましょう。
すると、\(x<2\)という範囲が求まります。
最後に、場合分けによって求めた2つの範囲をあわせます。
すると、解は
$$x≦3\cdots(解)$$
となります。
場合分けをすること。
場合分けの条件との共通範囲をとること。
最後は2つの範囲をあわせること。
これらがポイントとなりますね。
では、次の例題もサクッと解説しておきます。
次の不等式を解け。
$$|x+1|>5x$$
\(x≧-1\)のとき
$$\begin{eqnarray}x+1&>&5x\\[5pt]-4x&>&-1\\[5pt]x<\frac{1}{4} \end{eqnarray}$$
\(x≧-1\)との共通範囲は、\(-1≦x<\frac{1}{4}\cdots①\)
\(x<-1\)のとき
$$\begin{eqnarray}-x-1&>&5x\\[5pt]-6x&>&1\\[5pt]x<-\frac{1}{6} \end{eqnarray}$$
\(x<-1\)との共通範囲は、\(x<-1\cdots②\)
①と②をあわせた範囲が解になるので
$$x<\frac{1}{4}\cdots(解)$$
絶対値が2つあるときの解き方
次の不等式を解け。
$$|x|+|x-3|≦5$$
絶対値が2つ以上あるときには、それぞれを組み合わせた形で場合分けを考えていきます。
\(|x|\)の場合分けは、\(x≧0\)、\(x<0\)のとき
\(|x-3|\)の場合分けは、\(x≧3\)、\(x<3\)のときとなります。
これを組み合わせて考えるとこんな感じ。
このような3つの組み合わせが考えられるってわかるね。
なので、上の範囲において場合分けをして解いていくようになります。
\(x<0\)のとき
$$\begin{eqnarray}-x-x+3&≦&5\\[5pt]-2x&≦&2\\[5pt]x&≧&-1 \end{eqnarray}$$
これと\(x<0\)の共通範囲は、\(-1≦x<0\cdots①\)
\(0≦x<3\)のとき
$$\begin{eqnarray}x-x+3&≦&5\\[5pt]3&≦&5\end{eqnarray}$$
つまり、\(0≦x<3\cdots②\)の範囲では全てOKということ。
\(3≦x\)のとき
$$\begin{eqnarray}x+x-3&≦&5\\[5pt]2x&≦&8\\[5pt]x&≦&4\end{eqnarray}$$
これと\(3≦x\)の共通範囲は、\(3≦x≦4\cdots③\)
最後に①②③の範囲をあわせると
$$-1≦x≦4\cdots(解)$$
まとめ!
絶対値の方程式、不等式では、まず絶対値の外に\(x\)があるかどうかを見ましょう。
絶対値の外に\(x\)がなければ場合分けは不要。
原点からの距離の位置関係から式を変形していけばOKです。
一方、絶対値の外に\(x\)がある場合には場合分けが必要。
絶対値の中身が0以上、負になるバターンで分けて考えていきましょう。
場合分けをしたときには、求まった値が範囲に含まれているかどうかなど、チェックする項目が多いのも注意ですね。
大事な問題なので、たくさん練習して解けるようにしておきましょう!
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